湘南学園小学校の思い出
小学校昭和十四年度卒業  中村美恵(旧姓 内田)

 私は湘南学園が大好きだ。どうして好きかと考えていると、思い出が浮かんできた。
私が湘南学園小学校を卒業したのは昭和十四年度だ。その頃の湘南学園は、幼稚園と小学校だけで、全校で百名くらい。私は五年生になる時、群馬県から転校してきたが、入ったクラスは男子が十名、女子が五名だった。
やがて小学校を卒業すると、男子は(旧制)中学校、女子は高等女学校へと全員が進学するので、その受験準備のため放課後近くまで学校で勉強する。それで「お八つの時間」があった。菓子店が見本をもって注文を取りに来ると、当番がそれを見て注文するのだ。ある寒い日「うどん」がでた。それがとてもおいしかったので、私はそれから「うどん」が好きになった。食べ物の印象というのは、忘れないものである。

級担任は宗政喜先生である。ちょうど私が湘南学園に転入して間もなく、宗先生は結婚されることになった。級の生徒たちは、宗先生のお嫁さんに興味しんしんで、教室の黒板にいたずら書きをするやら大騒ぎ。先生は級の全員を自宅に呼んで新婦に会わせ、すき焼きをごちそうしてくださった。
ちょっと変わった思い出としては、学校で「試胆会」があったこと。夏の夕暮れ、学校に集まり、校長先生から怪談を聞かされた後、ひとりづつ間隔をおいて、寂しい場所へ置いてある札を取りに行く。途中、出てくるお化けは、先生方が白い布などをかぶったりしているのだ。
体育の時間に、海岸へ行ったこともある。放課後、数人の友だちとおしゃべりしながら江ノ電の駅まで歩くのも楽しかった。

月日のたつのは早い。私は東京で国文科を卒業してから北海道に来て、女子高校に三十年勤めた。
姑、その後、夫を介護して、やがてひとりになったので、八十三歳の私は、さて何をしようかなと考えた。ちょうどその時、近くに社交ダンススクールが新しくできた。私は昔、社交ダンスを習って楽しかったのを思い出し、行き始めた。
今年、八十三歳になった私は、うまく踊れないけど休まず通っているのが取り柄だ。
そのほか、いろいろしているので忙しい。
二〇一〇年(平成二十二年)六月三十日