松ぼっくりフォーラム

第5回松ぼっくりフォーラム開催のご報告

創立80周年を機に、同窓会では湘南学園のグローバル化、教育の方向性への応援をしています。
例年事業部を中心に企画する講演会、本年は主に教員を対象とした“松ぼっくりフォーラム”を計画していました。
学事優先により日程調整が困難とのことで一度は頓挫しましたが、辻理事長兼PTA会長(当時)に「“てらこや”(PTA主催講演会)との共催をご提案いただき、学園中高教頭、企画主任他の先生方との交渉の末、開催実現に至りました。辻氏のご協力に心より感謝しております。

その後、同窓会とPTAによる初めての共同開催とする主旨、経緯、企画内容などを、チーム湘南学園会議にて説明。学園長、PTA新会長、理事会新会長、後援会長の承諾を得ました。
当初は海外に精通している卒業生を迎えてのパネルデイスカッション方式の予定でしたが、公開劇場型会議へ企画を変更。教員全体の理解、意識向上を図るための「参加型」とし、パネリストは後援会、PTA、教員からも会議に相応しい方を推薦していただくこととしました。
同窓会は、学事に関わる全校運営協議会より学園長を通じて出席要請を受け、筧会長、副会長が「同窓会が学園に貢献できること」について、グローバル教育に向けてのチーム湘南学園全参加でのフォーラムを提案し合意に至り、開催が決定した次第です。

具体的な内容の検討にあたり、仲本学園長からグローバル教育に向けた学園での取り組みについて、「3月にSGH(スーパーグローバルハイスクール)に申請し惜しくも準認定校になりましたが、来年度の認定校取得のためにご協力いただきたい」とのご依頼があり、また湘南学園ではESD(Education for Sustainable Development)について、
① 持続可能な地域社会を築く努力や生き方を学ぶ活動
② 世界の若者との直接交流
③ 地球規模課題に向き合い、解決の方策と探求
④ 学園独自のキャリア教育等
を旗頭に、具体的な取り組み実施案がスタートしている等の詳細な説明がありました。
これを受けて、6月6日(土)14時~16時中高ホールにて、『湘南学園らしいグローバル教育とは』をテーマに掲げた参加型会議“第5回松ぼっくりフォーラム”が実施されたことをご報告いたします。
難産ではありましたが、無事当初の目的を果たすべく開催実現に至りました。
この間、ご協力頂いた関係者の皆さまに御礼申し上げます。

同窓会副会長 前川 力


会場の様子

満員の観客席
発言者が大型スクリーンに映し出されます

=テーマ=

“湘南学園らしいグローバル教育とは”


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1)スターティグメッセージ “グローバル教育の必要性”
               卒業生 朝海和夫氏 元EU 大使

 今、世界では急速に「グローバル化」が進んでいる。経済の面では世界的規模で相互依存関係が深まっており、通信技術や交通手段の発達により人や情報の国際的移動もこれまでになく活発化している。日本の場合は、こうした現象に加えて人口の少子高齢化に伴う社会的” 経済的な大きな挑戦にも当面している。教育の分野でこうした課題にどう対応するかは、日本の将来にとって決定的に重要だ。
 グローバル化が進むと言うことは、第一に、経済活動とかアイデアや知識を巡って国際競争が激化する、ということだ。島国の殻の中にこもっていたのでは競争から取り残される。人口が減少して行く日本では教育” 人材育成が特に重要なので、旧態依然と勉強するのでなく教育についても改革し、将来のニーズを見通しながら改善、改良して行くことが重要だ。第二に、グローバル化により異文化や異なる価値観なり利害との接触が格段に増加する。だから、自分の考えをしっかり持って発信する能力と、相手の立場に耳を傾けて理解する能力が重要だ。日本人同士なら「以心伝心」も良いが、そうも行かない場合が増えているし、自分の考えがそのまま通用するとも限らない。自分自身の考えや意見を持つ、人の考えを理解しようとする、といったことを学び、身につけることが益々重要になるだろう。グローバル化の三つ目の意味は、今までなら他の国の問題と考えていたことが実は自分の問題にもなったことだ。典型的な例は環境問題だ。例えば温暖化の問題には世界中の国が協力しなければならないし、産業界のみならず市民社会の貢献も必要だ。人権の問題、平和の問題などについても同じようなことが言える。生徒が世界に目を向け、幅広い視野をもつようにする教育が必要だろう。四つ目の特色はスピード、変化の早さだ。特にデジタル技術はそうだ。知識や考え方が立ち後れないよう注意しなければならない。生涯教育で学習を続けることが重要だが、将来の変化に対応しうる判断力、批判力といった基礎的な能力を若いうちから涵養して行くことが必要だろう。
 今まで約40年間外務省で仕事をする中で、8つの国に駐在して来た。その国の事情を多少なりとも勉強できたが、むしろ、外国にいると日本について見つめ直したことが多い。例えばアメリカに留学した時、学生が遠慮せずにドンドン教授に質問していたことには文化的ショックを受けた。日本では、先生の言う事はそのままノートに書き、忘れないようにする、と言う教育になじんで来たからだ。アメリカの学生が、このような初歩的な質問をするのはおかしいのではないか、と思ったこともあったが考えてみれば良い質問で、自分にも答えが判らないものがあった。その問題を考えた事もなかった。小さいころは良く「何故?」と大人に聞いていたが日本の教育では、いちいち「何故」と思ったりするのは必ずしも重視されなかったのではないか、と思った。
 その後の外務省ではアメリカ人、中国人、韓国人、フランス人等さまざまの人たちと接する機会があったが、それぞれ「お国柄」があった。それを集中的に体験したのは、1980年代後半のウルグアイラウンド交渉だ。参加国が100カ国を超える大規模な貿易交渉で、扱っていた問題は関税の引き下げ、特許等知的財産権の問題などで、今のTPP交渉と分野は大体同じだ。この交渉に4年間、連日参加してインド人は頭脳明晰な人が多いとか、ヨーロッパ人は理屈っぽくてややこしい、とか気がついたが、国際交渉、特に多国間の交渉では自分の立場を声高に主張しているだけでは殆ど意味がない、と思う場面がよくあった。自分の事だけを考えて「あれは出来ない、これも出来ない。」と言って、自分の要求を押し付けようとするのではなく、「あれは出来ないけど、あなたの関心を踏まえてこういう事なら出来る」といった代案なり、新しいアプローチを柔軟に考え出すことが必要だ。日本政府は柔軟さとか、創造的に新しいことを考えるのが、どうも苦手だった。
 さて、本日の会合のテーマは「湘南学園らしいグローバル教育とは」だ。会合には学園側、PTA、OBなど異なる分野の方々が参加している事が大きな特徴だ。まさに「湘南学園らしい」会合で、企画した関係者の方々に敬意を表したい。会合をどう進めるかは皆様次第だが私としては、学園側がかねてからグローバル化を意識して進めて来た教育に関して、どのような点に学園らしい強みなり特色があり、どのような点に問題や困難があったのか、どのような点ついて更に発展させることを考えており、その関連で父兄なりOBなりに何を期待したいか、と言ったことについて現場の意見を聞きたいと思う。現場の声が一番大事だ。ご父兄の方々にもこれまでの学園の歩みなり今後の行き方について当然ご意見、ご関心があるので、この機会に伺わせて頂きたいと思う。OBの皆さんにも、いわば学識経験者としての所見を大いに披瀝して頂きたい。
 この会合が実りある意見交換の場になり、今後進むべき道について、例えば来年度以降のスーパーグロ”バルハイスクール認定問題などについて、関係者の間で何らかの方向性なり結論めいた感触が得られる一助となれば幸いである。

2)議題 “湘南学園らしいグローバル教育とは”  チーム湘南学園 パネリスト10名

左から、後援会 田辺会長
     PTA 石橋副会長
     PTA 大野会長
     同窓会 筧会長
     仲本学園長 

左から、卒業生 朝海和夫氏
     中高 荒木グローバル教育主任
     中高 吉川企画主任
     理事会 徳光監事
     NPO湘南食育ラボ 川井副理事長

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同窓会 筧元則会長(1943年生 中高10回生)

1959年湘南学園中学校卒業後、慶応志木校、慶応大学を卒業、1966年から(株)伊勢丹に入社。勤務は婦人服中心でバイヤー時代、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ミラノ等の多くの経験を持ち、本店婦人服部長、吉祥寺支店長を勤めた後、JR京都伊勢丹社長、小田急百貨店副社長を経て、現在は学園同窓会会長と鎌倉宮カントリーテニスクラブの会長を引き受けております。
来年度、SGH認定校取得のための取り組みに、同窓会としては実社会、仕事を通した数々の経験値を発揮して、力添えしていきたいと思います。
長年継続して、成果を上げている学園の総合学習についても、私共も今まで以上に関心を持ち、課題改善に協力させていただきたいと思います。
ESDカレンダーの創造については、同窓会メンバーの豊富な経験談をお話し、よりレベルアップを計るべく、協力を推し進めていきたいと思っております。それにより学園のグローバル教育の益々の向上に繋がると信じています。
 学園らしいグローバル教育は、私学として他校の真似の出来ない、一貫教育(幼小中高)の再構築であろうと思っております。先日実施された世界の若者との直接交流であるヤングアメリカンズは、小中高生が一同になり、音楽性や芸術性の向上を目指した素晴らしい教育活動でした。
 今回開催されるフォーラムが、チーム湘南学園にとって、学園の目指している持続可能な社会の担い手の育成に繋がる新たなスタートであると信じております。

3)会場の皆さまと共に討論を展開

中高 伊藤先生
保護者からも積極的なご意見
小学校での取り組み発表(榎本校長)
卒業生 斎藤健夫さん
卒業生 内藤喜嗣さん
卒業生 佐藤允さん

総合司会進行 卒業生 鈴木健次氏(NHK会友) 写真中央 

 
 左 会場アナウンス PTA 近藤副会長
 右 総合企画運営  同窓会 前川副会長

閉会後、カフェテリアにて懇親会が催されました

仲本学園長より朝海さんに花束贈呈
司会の大役を果たされた鈴木さん 終始にこやかです

ラボ手作りのケーキとコーヒーをご馳走になりました。
チーム湘南学園が一堂に会し、和やかに談笑しながら
松ぼっくりフォーラムの無事終了を祝しました。
皆さま大変お疲れさまでした。

               取材 同窓会広報部

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